家族でも恋人でもない、でも友情よりもはるかに強い絆で結ばれている2人。
出会いと別れを繰り返した二人の女性の四半世紀を描いた、心揺さぶられる1冊です。
繊細な心理描写で、登場人物たちの感情にどんどん引き込まれていきます。
誰かの幸せを心から願い、そして自分に正直に生きるのだと強く思う物語に心打たれます。
本記事では、『光のとこにいてね』のあらすじとネタバレ解説、感想について、私が読んで感じた魅力を余すことなく伝えていきますが、
『光のとこいいてね』を全て読めて、一穂ミチさんの『スモールワールズ 』や本屋大賞を受賞した『汝、星のごとく』、『同志少女よ、敵を撃て』などの人気本も
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『光のとこにいてね』の概要
――ほんの数回会った彼女が、人生の全部だった――
古びた団地の片隅で、彼女と出会った。彼女と私は、なにもかもが違った。着るものも食べるものも住む世界も。でもなぜか、彼女が笑うと、私も笑顔になれた。彼女が泣くと、私も悲しくなった。
彼女に惹かれたその日から、残酷な現実も平気だと思えた。ずっと一緒にはいられないと分かっていながら、一瞬の幸せが、永遠となることを祈った。
どうして彼女しかダメなんだろう。どうして彼女とじゃないと、私は幸せじゃないんだろう……。――二人が出会った、たった一つの運命
切なくも美しい、四半世紀の物語――
著者 | 一穂ミチ |
出版社 | 文藝春秋 |
発売日 | 2022.11.7 |
ページ数 | 464ページ |
『光のとこにいてね』の作者一穂ミチさんについて
2008年『雪よ林檎の香のごとく』でデビュー。劇場版アニメ化もされ話題の『イエスかノーか半分か』など著作多数。
一穂ミチさんはもともとBL(ボーイズラブ)小説を多く出版してきました。
そして文芸作品を発表して話題になったのが「スモールワールズ」でした。
多くの賞を受賞・ノミネートされるなど、目が離せない気鋭の作家さんです。
一穂ミチさんの『スモールワールズ』の詳しい内容はこちらのブログで紹介しています。
『光のとこにいてね』は直木賞候補作品
『光のとこにいてね』は第168回直木賞にノミネートされました。
また、一穂ミチさんの『スモールワールズ』も2021年に直木賞候補作品となっています。
『光のとこにいてね』は2023年本屋大賞3位
本屋大賞は書店員の投票だけで選ばれる賞です。
「本屋大賞」は、新刊書の書店(オンライン書店も含みます)で働く書店員の投票で決定するものです。過去一年の間、書店員自身が自分で読んで「面白かった」、「お客様にも薦めたい」、「自分の店で売りたい」と思った本を選び投票します。 また「本屋大賞」は発掘部門も設けます。この「発掘部門」は既刊本市場の活性化を狙ったもので、過去に出版された本のなかで、時代を超えて残る本や、今読み返しても面白いと書店員が思った本を選びます。
ベテラン作家の選考委員が選ぶ直木賞や芥川賞と違い、書店員が選んでいるので、幅広く親しまれる本がノミネートしています。
一穂ミチさんの作品は、本屋大賞に2年連続ノミネートされています。
- 2022年本屋大賞3位 『スモールワールズ』
- 2023年本屋大賞3位 『光のとこにいてね』
『光のとこにいてね』の主な登場人物
あらすじの前に登場人物を整理しておきます。
全てを紹介してしまうとネタバレになってしまうため、ネタバレにならないよう紹介します。
- 小瀧結珠(こたきゆず):裕福な医者の家庭に育つ主人公。初登場時は小学2年生。
- 校倉果遠(あぜくらかのん):小学校2年生の時に結珠が特別な存在となったもう一人の主人公。シングルマザーものと育つ
- 結珠のママ:ボランティアと称して、団地の住人と隠れて会っている。
- 果遠のママ:シングルマザー、。オーガニックな生活を徹底している。
- チサさん:果遠の隣に住んでいる女性。
- 藤野素生(ふじのそう):結珠の兄の後輩。初登場時は医学部の大学生。
『光のとこにいてね』のあらすじ(ネタバレなし)
小学2年生の結珠と果遠は、古びた団地の片隅で出会います。
裕福な家庭で育った結珠とシングルマザーの母親のもとで暮らす果遠。
着ている服から食べるものも住んでいるところも全然違うけど、お互いに惹かれ合います。
しかし、二人の別れの瞬間はすぐにやってきてしまうのです。
二人は運命に導かれ、また引き裂かれるように出会いと別れを繰り返します。
7歳、15歳、29歳と四半世紀にわたる、二人の物語が綴られていきます。
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『光のとこにいてね』のネタバレ解説と考察
『光のとこにいてね』の魅力を深掘りしてお伝えしていきます。
ネタバレを含みますので、未読の方は飛ばしてください。
『光のとこにいてね』は百合?結珠と果遠の関係は?
二人の関係を四半世紀にかけて描いた物語が『光のとこにいてね』ですが、一体この二人の関係はどう捉えたらいいのでしょうか?
作者である一穂ミチさんはインタビューで、二人の関係性を「愛情の原液」だと表現しています。
二人の間には、お互いが傷ついて生きてきたことを、お互いだけが知っているという、労わり合いのようなものがあると思います。
一穂ミチロングインタビュー 作家の書き出し 文藝春秋BOOKSより
『光のとこにいてね』タイトルの意味と名言
そこの、光のとこにいてね
『光のとこのにいてね』より
小学生の時の団地での出来事。
結珠の立っていたところだけが、小さな陽だまりになっていて、光の中にいる結珠と、光の中に入れない果遠。
二人の境遇を象徴するかのような瞬間です。
そして、結珠の光は母親が戻ってくると消えてしまいます。
母親の存在は結珠にとっては暗い影なのです。
結珠の光は果遠の存在があってこそだということが、分かります。
また、高校時代家庭教師の藤野に本当は医師ではなくて小学校の教師になりたいのだと話ます。
その願いの始まりは、幼き日の果遠との交流がきっかけになっていたことに、結珠は気づき結珠にとって果遠こそが光であったと悟るのです。
最後の「光のとこにいてね」は、小学生の時や高校生の時と違う、果遠自身の意志として示されています。
小学生や高校生の時は親の身勝手によるものだったが、今回は、大人になった果遠が結珠は藤野の元にいた方が良いのだと悩み抜いた末に出した決断なのです。
人は生きていく上で光を追い求めていますが、そこには必ず影も存在します。
果遠が結珠を求め、結珠が果遠を求めることで、傷つけてしまう人がいるのです。
それでもお互い切に光のとこにいて欲しいとい願う気持ちが強烈に伝わってきます。
わたしたち、ずっとこんなふうなのかもしれない。
束の間のささやかな幸福と別離を繰り返すカノン。
だったら次の音符は決まっている。
『光のとこにいてね』より
出会いと別れを繰り返しながら、次第に関係性を変えていく結珠と果遠の間柄象徴するように、「パッヘルベルのカノン」が登場しています。
カノンは一つの旋律が何度も何度も繰り返し、様々なアレンジを加えながら展開されていきます。
まるで、結珠と果遠なのです。
生まれながら幸福が長く続かない状態で育った果遠は、幸せな状態が長くあってはならないのではないかと自分を罰しているように思えます。
『光のとこにいてね』母親と娘の関係
母親と娘という関係は非常にややこしい。
結珠は裕福な家庭に育ちましたが、裕福だから幸せというわけでもなく、いつも母親の機嫌を伺っていました。
自分と母親を切り離して考えることが困難な様子でした。
結珠の母親のサイコパス度合いは、いわゆる毒親の域を超えていて、背筋がゾッとします。
なんら罪悪感を感じていなくて、それどころか状況を楽しんでいる様子さえ伺えます。
一方、果遠は母親の極端なオーガニック思考に、一般的な生活とは言い難い環境にいました。
ただ、果遠は幼いなりに母親という存在を割り切って考えていて、俯瞰してみている様子も伺えます。
2組の母子の対比が、二人の性格にも影響しているように感じます。
また、大人になって母親からのしがらみから解放されて、自由に物事を選べるようになった2人が、結局自分たちの母親と同じ轍を踏もうとしているようにも思え、母親の呪縛がいかに強烈かということを感じます。
この文章が非常に印象的でした。
「「呪縛」とか「束縛」という単語には、縄や鎖でぐるぐる巻きにされるようなイメージがあるけれど、ママの存在はたとえるなら私という布地をまだらに染めているしみのようなもので、ほどいたり外したりできない。どんなに漂白を繰り返そうが真っ白にすることはできないし、しみの部分を切り取って縫い合わせたらそれはもう自分じゃない」
『光のとこにいてね』より
『光のとこにいてね』夫である藤野と水人について
結珠と果遠を心から理解し、そして二人の幸せを願うパートナーである藤野と水人。
この二人の視点から物語を読んでみるとまた違った景色が見えてきます。
結珠のことを心から想い、自分が本当は一番に支えたい藤野。
果遠が結珠と再開し、心の支えを得たからこそ、自分も果遠と離れることで、もう一度やり直せるのではないかと考える水人。
二人の夫の運命も非常に複雑で、歪んだ家族の中に身を置いてきていることが分かります。
『光のとこにいてね』のスピンオフが面白い!
タイトルは『青い雛』
初版限定でショー・ストーリーが封入されています。
団地時代の果遠の隣人出会ったサチの視点で描かれた物語です。
『光のとこにいてね』の感想
小学2年生から29歳まで描かれた2人の女性の物語は、心に闇を抱えながら出会ったり別れたりを繰り返します。
いい時ばかりではない。
でも、悪い時ばかりでもない。
だから、大切な人に「光のとこにいてね」と願う気持ちがじわじわと心を掴んでいくのです。
私は、自分の意思で気持ちをごまかさずに、今を生きているだろうか?
そして、幸せを心から願うことができる人はいるだろうか?
物語は、すごく余韻の残る終わり方で、美しく、結珠と果遠の二人がいつまでも光のとこにいて欲しいと願い、涙の出る結末でした。
『光のとこにいてね』みんなのレビュー
『光のとこにいてね』のレビューを紹介します。
二人の関係に苦しさともどかしさを覚えつつも、補いあっている感じが良い。幸せは誰かの不幸せと隣り合わせなのかもしれないが、真っ直ぐに誰かを愛せるのは素敵なことである。そんなことを思いながらスラスラ読めてしまう素敵な小説であった。
Amazonカスタマーレビューより
女性2人の物語。それぞれの心理を描きながら、読み進めやすい文章で話が進む。陽だまりのような温かな風景描写や複雑な家族関係と心理描写、軽快なストーリー展開と小説を楽しめた。
Amazonカスタマーレビューより
近づきすぎればかえって壊れてしまうような関係が、何重にも縁を重ねて、揺るぎない信頼に育っていくさまが納得できる形で描かれていた。
Amazonカスタマーレビューより
とても好ましい二人の関係を見守り続けて、ため息をつくように読み終えた。真面目に生きる人たちの、真面目な物語。
幼少期から不意にくる出会いと別れ。最初はどういう話?と、感じていましたが、2人気持ちを理解できるようになるにつれどんどんと物語にのめり込んでいきました。
2人にとってハッピーエンドが待ってると良いな、もう少し先も読ませて欲しいな、と感じながら読了です。
Amazonカスタマーレビューより
活字中毒の私は、1冊読み終えたらすぐ別の本を読み始めるのが普通なのですが、この作品については1晩じっくりと余韻に浸っていました。これからも何度か読み返したい、本当に大切な1冊となりました。
Amazonカスタマーレビューより
『光のとこにいてね』はこんな人におすすめ
- 二人の女性の四半世紀に渡る交流を読みたい方
- 直木賞候補作品、本屋大賞ノミネート作品と話題の本を読みたい人
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『光のとこにいてね』まとめ
愛情とも友情とも違う二人の女性の関係を、四半世紀に渡り描いた『光のとこにいてね』。
心から幸せを願う人に出会えたことは何よりの幸せで、これから二人がどのような人生を送っていくのか、しばらく余韻に浸ってしまいます。
自分らしく生きるには、自分らしく生きる術が必要で、この物語では結珠と果遠がそうだったのだと思います。
自分に正直に生きることを考えさせられる、素晴らしい作品でした。
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